機械学習に独学で挑む

非情報系理系大学生が独学で機械学習に挑みます

AI、機械学習の独学に使った数学の参考書、問題集とそのレビュー

 

機械学習の独学に数学は必要か

 よくAIを勉強する前にまずは数学をしっかり勉強しろ、などと言われます。機械学習の現在の人気は一過性のものであり、(すでにブームは過ぎたとも…)応用の利く数学をまずは勉強するべきだという主張は頷けます。

 その話を真に受けた私はある程度は基本的な数学を学んだつもりです。しかし、私が個人的に独学してきたうえで、初心者が機械学習を独学するためだけならそれほど高度な数学の知識は必要ないと感じました。

 この話はまた別の機会にするとして、ここでは純粋に使った教科書と問題集のレビューを書いていきたいと思います。

 

線形代数

教科書

スバラシク実力がつくと評判の線形代数キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!

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 まずは簡単と評判だったマセマです。教科書と問題集が一緒になった感じでした。問題の解き方は載っているので、この本を見ながらなら載っている問題は解けるようになるといった感じでしょうか。「すぐわかる」と謳っていますが、とにかく薄いので私には後半は分かりませんでした。正確には問題はとりあえず解けるので分かった気になりましたがその後で教科書を読んだ際に分かっていなかったことに気づきました。

 一言で表すならうっすい公文式だと思います。

 6時間くらいで終わらせました。

 

線型代数学(新装版) (数学選書)

線型代数学(新装版) (数学選書)

 その次に有名な佐武線形とやらに挑戦してみましたが、置換の部分が理解できず挫折。それまでの部分はとても分かりやすくてよかったですが、すぐ離脱してしまいました。

 5時間くらいしかやっていません。

 

線形代数学(新装版)

線形代数学(新装版)

 ということでマセマの後の教科書としてはレビューで佐武線形より簡単と評判だったこれを使いました。とても良かったです。基本的にはこれを読んでおけば間違いないと思います。行間を埋める必要もほとんどなく、難しいところはかなり丁寧に説明してくれています。そして図も多用されており、視覚的にも理解しやすかったです。ほかのレビューでは厳密性に欠ける、などと書かれていたのですが、私は全く気になりませんでした。

 30時間くらいで1周しました。

問題集

明解演習 線形代数 (明解演習シリーズ)

明解演習 線形代数 (明解演習シリーズ)

 問題集にはこちらを使いました。章の初めに定理集があり、それに続いて例題、練習問題があります。

 定理集を見ながらまずは自分の力で例題を解き、解けなければ模範解答を読む、というスタイルで取り組みました。その後で練習問題を解くのですが、7割くらいは例題とほとんど同じ、3割は例題を少しひねったものになっていて、たまに全然わからないものもあったりして楽しかったです。

 例題の模範解答はかなり丁寧で分かりやすいのでお勧めです。練習問題に関しては少し飛躍がある部分もあるのですべて理解したい、という方は気を付けてください。

 30時間くらいで1周と間違った問題の2週目を解きました。

 

微分積分解析学

教科書

微分積分キャンパス・ゼミ 改訂6

微分積分キャンパス・ゼミ 改訂6

 微積もマセマから入りました。微積に関しては説明もとても分かりやすく、すんなり理解できました。おすすめです。

 しかし、これも扱う内容があまりに少ないです。極限、微分積分全てにおいてかなり基本的な内容までで終わっています。もう少し数学を学びたいならほかの教科書で勉強する必要があると思います。

 6時間くらいで終わりました。

 

基礎数学2解析入門1

基礎数学2解析入門1

 マセマの次は評判の良かったこちら。

 しかし、はっきり言って全くお勧めできません。

 もちろん書いてある文字を読むことはできるのですが、全然頭に入ってきませんでした。書いてある証明を読んでも行間が広く、納得できないことが多かったです。

 個人の感想としてはこの教科書は授業ありきのもので独学には向いていないと感じました。定理とその証明がただ羅列してあるイメージです。

 このままでは分かった風になってしまうと思い、早い段階で諦めました。

 10時間くらいで諦めました。

 

定本 解析概論

定本 解析概論

 ということで次はこちら。レビューでは少し表現などが古いとあったので敬遠していたのですが、結論から言って最高でした。

 定理とその証明の羅列ではなく、自学用の講義形式となっているので理解しやすいように話が進んでいきます。

 証明も納得できる流れで書いてありますし、行間も程よいと感じました。

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(勉強時のノートの一部。教科書を読むときには定理とその証明は写経するようにしていました。黒い部分は教科書を写している部分で青い部分は行間が空いていると感じたときに自分で埋めた部分です。)

 定理の間に具体例や発展的な内容が数多く含まれています。それらはかなり難しいものも多く、読んでも理解できなかった部分や読んでいない部分もあります(が、あまり気にしていません)。

 また、最後のルベーグ積分は難しそうだったので読みませんでした。ルベーグ積分を除いて2周しました。50時間くらいかかりました。

 

問題集

新版 演習微分積分 *1

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 微積の問題集はまずはこれをやりました。例題の解答はとても丁寧で分かりやすいです。おすすめです。

 難易度、網羅度はマセマよりはうえ、次の明解演習よりは下、といったところです。例題の模範解答を読めば基本的には練習問題も全て解けました。

 注意としてはεδは扱っていないところです。もし大学等の定期試験に使うのであれば気を付けたほうがいいと思います。

 25時間くらいで1周と間違った問題は2週目を解きました。

 

明解演習微分積分 (明解演習シリーズ)

明解演習微分積分 (明解演習シリーズ)

 その次にこれをやりました。これも例題の模範解答が分かりやすく、おすすめです。

 ほかの特徴は線形代数の方と同じです。

 25時間くらいで1周と間違った問題は2週目を解きました。

 

統計学

統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)

統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)

 統計はこれしかやっていません。

 難しいというレビューもよく見るのですが、具体例も多く、とても分かりやすかったです。

 ただ、数式はかなり多いです。基本的な微積の知識(マクローリン展開、重積分)があれば大丈夫ですが、数式アレルギーの人が統計学の1冊目に選ぶのはお勧めできないです。本の後半に行くに従って数式は増えていきます。

 また、各章の末尾に練習問題があります。これもほかのレビューでは否定的な意見が多かったですが、理解を深める良問が多いと感じました。ただし、こちらも数学チックな問題が多いのは否めません(私にとってはちょうどよい難度で面白かったです)。前半の章のあまりに面倒な数値計算Pythonで解いたりしました。

 1週目は練習問題を解かずに読むだけ。2週目に読んで練習問題を解きました。20時間かかりました。

 

最後に

 機械学習にはそれほど使ってはいませんが、結構時間はかけたのである程度大学教養程度の数学は理解できたのかと思っています。

 是非参考にしてください。

*1:新版演習数学ライブラリ

*2:新版演習数学ライブラリ

*3:新版演習数学ライブラリ